女性の体内では、脳の底部にある「下垂体」からプロラクチンと呼ばれる乳汁分泌刺激ホルモンが分泌されています。本来、このホルモンは妊娠中から出産後にかけて急増し、母乳の産生を促すとともに排卵を一時的に止める役割を担っています。しかし、妊娠していない状態にもかかわらずプロラクチンの血中濃度が跳ね上がってしまうと、体は「授乳期である」と誤認し、妊娠してないのに母乳が出る理由を作り出してしまいます。
プロラクチン値が跳ね上がる代表的な要因として、以下の4つのメカニズムが挙げられます。
1つ目は、ストレスによるプロラクチン上昇です。プロラクチンの分泌は、脳の視床下部から出る「ドーパミン」という神経伝達物質によって普段は適度に抑え込まれています。しかし、過度な精神的ストレスや激しい疲労、睡眠不足、急激な生活環境の変化に直面すると、自律神経とともに視床下部のコントロール機能が乱れ、ドーパミンのブレーキが外れてプロラクチンが過剰に放出されてしまいます。
2つ目は、搾ると母乳が出る原因として非常に多い「局所への物理的刺激」です。下着による継続的な摩擦、性交渉時の刺激、あるいは「まだ出るだろうか」と気になって頻繁に自分で胸を絞る行為そのものが、神経反射を通じて脳を刺激し、授乳中と同じようにプロラクチンとオキシトシンの分泌を促進させてしまいます。確認のために搾り続ける行為は、症状を長引かせる最大の引き金となります。
3つ目は、「妊娠超初期症状」と「思い込み」の境界線です。受精卵が着床した直後の妊娠超初期にもホルモン急変によって胸の張りや微量の分泌を感じるケースはありますが、妊娠検査薬が陰性であるにもかかわらず母乳が出る場合は、妊娠によるものではなく、内分泌系のアンバランスや後述する薬剤性・腫瘍性の影響を疑うのが医学的に妥当です。