本展最大の目玉として美術ファンを騒がせているのが、長らく個人蔵として眠っていた未公開のプライベート・スケッチ群だ。クリムトといえば金箔を大胆にあしらった「黄金様式」が象徴的だが、彼が紙と鉛筆だけで描いたドローイングには、恐ろしいほどのデッサン力と生々しい人間観察の眼が光る。
モデルの輪郭を一筆で捉える流麗な線の疾走感。学芸員による最新の分析によれば、修復作業の過程でキャンバスの裏地に隠されていた下絵の痕跡までが判明したという。巨匠が葛藤しながら筆を走らせた吐息や衝動が、100年の時を超えてダイレクトに伝わってくるかのようだ。