透き通る南国の海をそのままグラスに注いだようなビジュアルでありながら、香りと味わいは完全にオレンジそのものというギャップ。これこそが、多くの愛飲家を惹きつける最大の魅力です。
ブルーキュラソーのオレンジ原料の理由は、16世紀の大航海時代にまで遡ります。スペイン人がカリブ海に浮かぶベネズエラ沖のオランダ領「キュラソー島」にオレンジを持ち込んだものの、島の乾燥した気候と赤土の土壌には適さず、果肉は極めて苦く食用には適さない「ララハ(ワレンシアオレンジの変種)」へと変貌してしまいました。しかし、現地の人々は廃棄されていた果皮に極めて豊かなエーテル精油(アロマ成分)が含まれていることを発見。乾燥させた果皮をアルコールに浸漬・蒸留したことで誕生したのが、リキュール「キュラソー」の起源です。
本来、蒸留されたキュラソー(トリプルセックやホワイトキュラソー)は無色透明です。では、なぜあえて青く染めたのでしょうか。19世紀後半から20世紀初頭にかけてオランダの老舗リキュールメーカー各社が世界展開を図るなか、「キュラソー島を取り囲む美しく深いカリブ海の青」を視覚的に表現するため、植物由来(現在は食品添加用青色着色料)で鮮烈なマリンブルーに着色したのが始まりとされています。
視覚的にはクールなブルーでありながら、舌の上では濃厚なオレンジの甘みとピール由来の上品なビター感が広がる――この「視覚と味覚の認知的不協和」こそが、カクテルバーにおいて一世紀以上にわたり指名され続ける心理的フックとなっています。