館内の核をなすのは、出雲屈指の豪農であった江角(えずみ)家の旧邸宅だ。敷地内に足を踏み入れた瞬間に目を奪われる主屋は、明治初期の粋を集めた堂々たる木造建築。なかでも圧巻なのが、南側に広がる出雲流庭園と枯山水の調和である。巨大な自然石を豪快に据えつつ、築山には松平不昧(松江藩主・茶人)が愛した出雲地方特有の美意識が色濃く影を落とす。
縁側に座り、庭園と対峙してみる。整然と掃き清められた白砂と苔の深い緑の対比が、見る者の思考を整えていく。視線を遠くにやれば、斐伊川がもたらした肥沃な出雲平野の湿潤な空気が借景として溶け込む。過度な装飾を削ぎ落とし、自然の雄大さを庭の中に凝縮する手法は、華美を嫌い本質を求めた山陰の精神文化そのものだ。晴天の日はもちろん、雨に濡れて黒々と光る岩肌の表情には、言葉を失うほどの凄みがある。