胃カメラで最も苦痛とされる「オエッ」という咽頭反射(嘔吐反射)は、生体が気道や消化管への異物侵入を防ぐために備えている極めて正常な防御反応です。特に舌の付け根にあたる舌根部(ぜっこんぶ)や咽頭後壁、軟口蓋に異物が触れると、舌咽神経から脳の延髄にある嘔吐中枢へ信号が伝わり、無意識に喉と腹筋が強く収縮します。
口からの胃内視鏡(経口内視鏡)では、スコープがどうしても舌根部を通過するため、この反射が誘発されやすくなります。検査前に実施される「喉の局所麻酔(キシロカインスプレーや麻酔ゼリー)」は、この咽頭粘膜の知覚を一時的に麻痺させ、反射を鈍らせる役割を果たします。ただし、局所麻酔の効き目には個人差があり、知覚が麻痺していても「異物が入っている」という視覚的恐怖や緊張から心理的に反射が誘発されるケースも珍しくありません。
ここで重要なのは、喉の麻酔が効いてくると「喉が腫れぼったい」「唾が飲み込みにくい」という違和感が生じますが、これは麻酔が正常に作用している証拠だという理解です。この段階で慌てて喉を鳴らして唾を飲み込もうとすると、喉の筋肉が緊張してかえって検査時の苦痛を増大させる原因となります。