作中にひっそりと散りばめられた裏設定も、作品の奥行きを深めている。最も象徴的なのが、雲の上の天国へと続く飛行機の列の描写だ。撃墜された戦友たちが白い雲の帯となって空の彼方へ昇っていくシーンは、ポルコが背負うトラウマの深さを無言のうちに語りかけてくる。
また、ホテル・アドリアーノの壁に飾られた古い写真にも注目したい。青年時代のマルコ、ジーナ、そして戦没した仲間たちが笑顔で写るその写真では、マルコの顔だけが塗りつぶされている。自らの過去を消し去り、人間としての愛や幸福を受け取る資格がないと思い込むポルコの屈折した心理が、こうした細部のアートワークに鮮明に刻まれているのだ。森山周一郎が演じた渋く重厚な声は、この隠された過去の重みを余すところなく表現していた。