かつて京都市北区上賀茂岩ケ垣内町に店舗を構えていた「らーめん千の風 北山店」。当時の営業データや地域情報誌の記録を振り返ると、昼は11:30~14:30、夜は18:00~23:00という枠組みで営業し、植物園帰りの観光客や近隣の学生、舌の肥えた北山マダムたちで連日賑わいを見せていました。当時から掲げられていた「体にやさしい自然派らーめん」「純和風だしの調和」というコンセプトは、濃厚豚骨や背脂醤油が主流だった京都ラーメン界において極めて異彩を放っていたのです。
しかし、2000年代後半から2010年代初頭にかけて北山店は突如としてシャッターを下ろしました。告知を見落とした地元ファンの間では「北山店が突然閉店した」「不景気による撤退ではないか」といった憶測が飛び交いましたが、真相は「京都・四条河原町への本拠地移転」でした。路面店としてのキャパシティや観光動線の変化を見据え、京都屈指の繁華街である新京極・四条河原町エリア(中京区新京極通四条上ル中之町)へ店舗拠点をシフト。北山で培った技術とレシピを引っ提げ、より多くの国内外のゲストへ味を届けるための積極的な移転劇だったのです。
創業の地である北山を離れた背景には、単なる集客数の追求だけでなく、「千の風」が目指すラーメンの完成度を次のステージへ引き上げるという強い職人魂がありました。この決断が、のちに訪れるインバウンドブームと完璧に合致し、店を世界的名店へと押し上げる決定打となったのです。