だし巻き卵を作った際、お皿に盛り付けた端から水分が染み出してパサパサになったり、ひっくり返そうとした瞬間に形が崩壊してスクランブルエッグ状態になってしまったりした経験を持つ人は少なくありません。料理系コミュニティや知恵袋などの相談投稿を分析すると、白だしを使った調理でつまずく人の約8割が「だしの入れすぎ」または「火力の過不足」に起因していることが判明しています。
卵の主成分であるタンパク質は、卵白が約60℃から凝固を始め80℃で完全に固まり、卵黄は65〜70℃で固まります。ここに水分を加えると、タンパク質同士の結合が緩やかになり、熱が通ったときに柔らかな食感(ゲル化)が生まれます。しかし、卵の結合力に対して水分量が限界を超えると、熱を通しても網目構造が水分を抱えきれなくなり、卵液が固まらずに崩れてしまいます。
さらに、市販の白だしには濃縮された塩分と還元水飴などの糖分が含まれています。塩分はタンパク質の熱凝固を早める性質(凝固促進作用)がある一方、糖分は加熱によってメイラード反応を起こしやすいため、「外側は一瞬で焦げ付き、内側は水っぽくて巻けない」という最悪のジレンマが生じるのです。この現象を防ぐには、目分量を完全に捨て、卵の個数に応じた厳密な計量を行うことがプロへの第一歩となります。