「早く治したいから1日に何時間も当てたい」「1回20分を3回やれば治癒スピードが3倍になるのではないか」と考える患者は少なくありません。しかし、ここには生体反応における決定的な盲点が存在します。
細胞生物学的な研究により、LIPUSによる骨芽細胞刺激反応は「1回あたり約20分間の照射でプラトー(飽和状態)」に達することが判明しています。一度刺激を受けた細胞シグナル伝達系は活性化状態を一定時間維持するため、同一部位に1日何時間も連続して当てたり、1日に何回もやりすぎたりしても、骨癒合の促進スピードが比例して上がることはありません。
過剰に照射したからといって重篤な副作用や組織破壊が起きるわけではありませんが、バッテリーの無駄な消耗や皮膚のジェルかぶれを引き起こす原因になります。臨床試験で「治癒期間約4割短縮」という成果を出したプロトコルは、あくまで「1日1回・20分間」の継続照射です。
もう一つの重大な盲点が「照射位置のズレ」です。LIPUSの超音波ビームは拡散せず、プローブの直下に集中的に届きます。ギプス固定を行っている場合は「ギプス窓(超音波プローブを挿入するための小さな開口部)」から正確に骨折線を狙って当てますが、窓の位置やプローブの固定角度が数センチずれていると、超音波が骨折部に届かず治療効果が著しく低下してしまいます。整形外科で医師や理学療法士、看護師にマーキングしてもらった位置を忠実に守り、超音波伝導ジェルを十分に密着させて照射することが不可欠です。