知能や言葉の遅れがない旧アスペルガー型の人々は、幼少期や学生時代を「少し個性の強い真面目な優等生」として過ごすケースが珍しくありません。問題が一気に表面化するのは、決まりきった正解が存在しない「社会人生活」や「結婚生活」に突入した局面です。
発達障害専門の外来医師や支援現場の記録、当事者コミュニティに寄せられる体験談を検証すると、大人のアスペルガー特徴には明確な共通パターンが存在します。
30代で診断を受けたある当事者の手記には、現場の葛藤が生々しく綴られています。
「上司から『適当にやっておいて』と言われると頭が真っ白になり、何一つ手を付けられなくなる。『空気を読んで動け』という指示が、外国語のように意味を解読できない。業務そのものは誰よりも早く終わらせられるのに、チームの雑談に入れないだけで『協調性がない』と評価を落とされてきた」
職場で頻発する摩擦の根底には、主に次の3つの特性が存在します。
第一に、文脈や表情から意図を察することが困難なコミュニケーション障害です。「言われた言葉を文字通り受け取る」ため、「お茶でも飲んでゆっくりして」という営業先の社交辞令を真に受けて長居してしまったり、会議で上司の明らかな間違いを配慮なしに正論で指摘して場を凍りつかせたりします。
第二に、変化を極端に嫌うこだわりの強さです。業務の手順や座席の位置、スケジュールの急な変更に対してパニックを起こす、あるいは業務外の社内ルールを融通を利かせずに厳格に他人にまで押し付け、衝突を引き起こします。
第三に、見落とされがちな感覚過敏の問題です。オフィスの蛍光灯のチラつきが耐えられない、同僚のタイピング音や空調の機械音が大音量のアラームのように耳に突き刺さるといった身体的ストレスが日常的に蓄積し、結果として夕方には極度の疲弊から倒れ込むように眠ってしまうという悲痛な声が現場から多く報告されています。
自分の傾向を客観的に把握する手段として、心理学分野で広く使用されているAQテストなどのアスペルガーチェックリストが用いられますが、自己判断だけで完結させず、日常的な困りごとの具体例をメモしておくことが重要です。