白いシャツをより白く見せる。その視覚的効果のためだけに投入される化学物質が蛍光増白剤だ。この物質は汚れを落とすわけではない。目に見えない紫外線を吸収し、補色である青色の可視光を発することで、黄ばみを目立たなくさせる「染料」の一種である。
日用品・トイレタリー産業において長らく重宝されてきたこの成分だが、用途には厳格な制限が存在する。乳幼児用の肌着、医療用ガーゼ、脱脂綿、食品衛生法が関わるクッキングペーパーなどへの使用は業界自主基準や行政指導で厳しく禁じられている。直接口に触れるものや皮膚バリアが未成熟な新生児に対して、蛍光染料が皮膚刺激やアレルギー反応の引き金になるリスクを避けるためだ。
しかし、一般家庭では大人の衣類と一緒に乳幼児の服を蛍光増白剤入り洗剤で洗ってしまうケースが後を絶たない。家庭用品品質表示法に基づくラベルを熟読しなければ、知らぬ間に家族の肌着を蛍光染料でコーティングし続けることになる。白さの正体が「清浄さ」ではなく「化学的な光のトリック」である事実を、消費者は冷静に見極めなければならない。