「毎年9月から11月にかけて洗髪時の抜け毛が倍近くに跳ね上がる」という現象に戦慄する人は大勢います。この秋に抜け毛が増える原因は、動物の換毛期の名残という進化生物学的な要素に加え、夏の過酷な環境ダメージが時間差で顕在化することに起因します。
夏季の強力な紫外線は頭皮のコラーゲン層を破壊して硬化させ、猛暑による頭皮の皮脂酸化、冷房による自律神経の乱れ、睡眠不足が毛母細胞の活力を削ぎ落とします。毛髪はダメージを受けてから休止期へ移行し、毛包から浮き上がって脱落するまでに約2〜3カ月のタイムラグを要します。つまり、7〜8月に蓄積した頭皮疲労のツケが、秋の抜け毛ラッシュとして押し寄せる仕組みです。秋季の一時的な増加であれば、1日150本前後に達しても1〜2カ月で沈静化するため、過度に悲観する必要はありません。
深刻なのは、季節要因ではなくヘアサイクルの乱れが起きる構造的理由です。正常な毛髪は「成長期(2〜6年)」「退行期(2〜3週間)」「休止期(3〜4カ月)」という周期を巡ります。しかし、男性ホルモン由来の代謝産物や過度な生活習慣の悪化、慢性的な血行阻害に晒されると、数年あるはずの成長期が数カ月から1年未満へと短縮されます。太く長く育つ前に抜け落ちる軟毛が増加することこそが、地肌が透けて見える現象の主因です。