「胃の痛みや不快感が一切ないから自分は健康だ」という認識は、消化器病学の観点からは極めて危険な思い込みです。厚生労働省や日本消化器病学会の報告データによれば、ピロリ菌感染者の約7〜8割は、自覚症状をほとんど自覚しないまま日常生活を送っているとされています。
しかし、「自覚症状がない=病気が起きていない」ではありません。ピロリ菌が胃内に棲みつくと、数年から数十年をかけて胃粘膜の萎縮を引き起こす「萎縮性胃炎」へと移行します。粘膜が薄くなり腸の粘膜のように変化する「腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)」を起こすと、胃がんの発生リスクが非感染者に比べて大幅に高まることが数々の疫学調査で裏付けられています。
国内外の大規模臨床研究において、日本人における胃がんの約9割以上がピロリ菌感染に起因していると指摘されています。「症状が出てから受診する」のではなく、「症状がなくても一生に一度は検査を受ける」ことが強く推奨されるのはこのためです。