三味線プレイヤー像のパラダイムシフトを起こした先駆者といえば、吉田兄弟や上妻宏光の存在を抜きには語れない。彼らが1990年代後半から2000年代にかけて打ち出したクロスオーバーなサウンドは、三味線を「保存すべき伝統芸能」の額縁から解き放ち、世界基準のライブインストゥルメントへと押し上げた。
現在活躍する若手奏者たちの多くは、彼らのダイナミックなステージングに衝撃を受け、自発的に撥を握った世代だ。古典の枠にとどまらず、エフェクターを繋いでバンドと共演したり、劇伴音楽を手掛けたりと、表現のフィールドはかつてない広がりを見せている。「伝統を守らなければならない」という重圧ではなく、「この刺激的な音を鳴らしてみたい」という純粋な衝動こそが、今もっとも求められるプレイヤーの適性といえる。