冨手麻妙のキャリアにおいて最大の転機となったのが、日活ロマンポルノ50周年を記念したリブート企画の1作、映画『アンチポルノ』(2017年公開)での単独主演です。フェミニズム、表現の自由、女性の身体の客体化に対する強烈なアンチテーゼを描いた本作は、国内外の映画祭で絶賛を浴びました。
作中では全裸での熱演や過激な暴力描写が連続しますが、当時のインタビューや制作メイキング記録によると、その制作現場は極限の緊張感に包まれていたと証言されています。監督の直感的な演出に対し、冨手はただ服従するのではなく、役の動機や身体表現の必然性について激しく議論を交わす関係性を築いていました。
「監督の操り人形には絶対にならない」という強いプロ意識を持っていた冨手は、現場で生じる監督の理不尽な要求や曖昧な演出に対して疑問をぶつけ、自らの解釈を提示し続けたと述懐しています。二人の結びつきは、私的な癒着ではなく、作品のクオリティを極限まで高めるための「表現者同士の激しいぶつかり合い」というプロフェッショナルな緊張関係の上に成り立っていました。