愛犬の健康管理において最も多い勘違いの一つが、「予防薬」という名称からくる誤解です。実はフィラリア予防薬は、蚊を寄せ付けない薬でも、刺された瞬間に感染をブロックするバリアでもありません。体内に侵入したフィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)が心臓へ移動する前に、1か月分まとめて駆除する「体内お掃除薬(駆虫薬)」です。
この駆虫メカニズムを理解すると、投与すべき期間が明確になります。基本ルールは「蚊が出始めてから1か月以内」に第1回目を投与し、「蚊を見かけなくなってから1か月後」に最終投与を行うことです。
日本国内の平均的な投与スケジュールとしては、関東や関西などの温暖地では5月上旬から12月中旬まで(年8回投与)が基本プロトコルとされてきました。しかし、近年の気候変動により蚊の活動限界温度(約15℃以上)に達する時期が前倒しされ、11月下旬になっても活動が収まらないケースが増加しています。獣医医療の現場では、確実な予防のために4月下旬から投与を開始するケースや、ノミ・マダニ対策と合わせて1年を通して投薬を続ける「通年予防」を推奨する動物病院が増加傾向にあります。
特に重要なのが「最後の1回(12月頃の投薬)を絶対にサボらないこと」です。秋口に蚊がいなくなったからと途中で投薬をやめてしまうと、10月や11月に刺されて体内に侵入した幼虫がそのまま越冬・成長し、翌春には心臓へ到達してしまいます。「終わり良ければすべて良し」を徹底することが、感染ゼロへの絶対条件です。