救命救急センターや地域中核病院の臨床現場における胸痛トリアージの実態を検証すると、患者自身の自覚症状と実際の重症度には少なからぬギャップが存在します。
救急医療関係者の証言や症例報告によると、夜間に「息を吸うと左胸がチクチク痛む」と訴えて時間外救急を受診した患者の約半数は、筋肉疲労や肋間神経痛、心因性反応と診断されています。しかし残りの症例の中には、軽微な胸痛しか自覚していなかったにもかかわらず、心電図検査で広範囲の心筋虚血が発覚したケースや、胸部X線検査で完全虚脱寸前の左気胸が発見された事例が確実に含まれています。
医療現場の初動において最も重視されるのは、「痛みの強さ」ではなく「随伴する自律神経症状と全身状態」です。痛みがチクチクと軽くても、呼吸困難感、顔面蒼白、脈の乱れ(不整脈)、めまいを伴っている場合は、身体の循環動態が破綻しかけている証左であり、現場では最優先の緊急対応が取られます。