多くの人が混同しがちなのが、「世界遺産(世界文化遺産・世界自然遺産)」と「無形文化遺産」の根本的な違いです。前者は1972年採択の世界遺産条約に基づき、ピラミッドや富士山のような「形ある不動産や自然環境」を保護の対象とします。それに対して後者は、2003年のユネスコ総会で採択された「無形文化遺産保護条約」に端を発し、人から人へと受け継がれる口承伝統、芸能、社会的慣習、儀礼、祭礼、伝統工芸技術といった「無形のわざや営み」を守るために創設されました。
無形文化遺産の審査において最も留意すべき点は、ユネスコが「排他的な優秀性(最高峰の芸術性)」を競う場ではないという点です。審査機関が注視するのは、その文化が地域コミュニティのアイデンティティと結びつき、世代を超えて再創造され続けているか、そして将来にわたって継承するための具体的な保護措置が講じられているかという「生きた持続可能性」です。
審査の流れとしては、国内での重要無形民俗文化財や重要無形文化財の指定などを前提に、文化庁が無形文化遺産保護条約関係省庁連絡会議を経てユネスコへ提案書を提出します。その後、評価機関による事前審査(「記載」「情報照会」「不記載」の勧告)を経て、年末に開催される政府間委員会で最終的な登録(代表一覧表への記載)が決定される仕組みとなっています。