韓国の自治体名を見渡すと、釜山(プサン)、仁川(インチョン)、大邱(テグ)、光州(クァンジュ)、大田(テジョン)、蔚山(ウルサン)の6都市は「広域市」と呼ばれているのに対し、ソウルだけが唯一「特別市」を冠しています。この呼称の違いは、単なる歴史的な慣習ではなく、地方自治法およびソウル特別市行政特例に関する法律に明確に定められた統括権限の差に基づいています。
最大の相違点は、行政の首長であるソウル特別市長の政治的地位です。一般的な広域市の市長が「次官級(副大臣級)」として遇されるのに対し、ソウル特別市長は地方自治体の首長の中で唯一「長官級(閣僚・大臣級)」の待遇を受けます。大統領が主宰する国務会議(閣議に相当)への直接出席権限限を法的に保障されており、国家の最高意思決定機関へ直接意見を具申できる立場にあります。
さらに、人事権や財政権においても他都市とは次元の異なる特例措置が適用されています。副市長の定員が広域市より多く設定されており、警察・消防などの治安維持体制や都市計画の許認可権においても、中央政府直属に近い独立性が維持されてきました。「首都としての特別性」を国家ぐるみで法制化している点こそが、広域市との決定的な境界線です。