東日本大震災の津波規模を把握する上で欠かせないのが、専門用語としての「津波の高さ(潮位偏差)」「浸水深(地面からの浸水高)」「遡上高(斜面を駆け上がった最高地点)」の明確な区別です。一般的に報道された「津波の高さ」の多くは検潮所や痕跡高に基づくものですが、陸地の斜面を駆け上がった勢いを示す「遡上高」では、想像を絶する数値が計測されました。
合同調査グループ等の現地調査資料によると、岩手県宮古市重茂姉吉地区における最大遡上高は40.5メートルに達しました。これは1896年の明治三陸地震津波で記録された38.2メートルを更新し、日本の近代観測史上最大の遡上記録となっています。現地の斜面には、立木がなぎ倒され表土が剥ぎ取られた痕跡が生々しく残されており、海抜40メートルの高台まで海水が到達した事実を物語っていました。
一方で、海岸線に設置されていた気象庁の検潮所記録を見ると、福島県相馬で9.3メートル以上、岩手県宮古で8.5メートル以上、岩手県大船渡で8.0メートル以上、宮城県石巻市鮎川で7.6メートル以上が観測された直後、押し寄せた津波の猛烈な圧力によって観測機器自体が破損・流失しました。そのため、沿岸部を直撃した実際の波高はこれらの計測数値を大幅に上回っていたことが判明しています。