高松市美術館の展示室に足を踏み入れると、地方公立美術館の既成概念が鮮やかに覆されます。同館が国内外の美術関係者から「現代アートの聖地」と評される最大の理由は、開館当初から貫かれてきた極めて明確な3つの収集方針にあります。
第1の柱は、具体美術協会やもの派など、日本の前衛芸術の軌跡を網羅した戦後日本の現代美術コレクションです。地方都市の美術館がまだ古典絵画や郷土史料の収集を中心としていた昭和の開館当時から、時代の先端を走る現代美術を積極的に収集してきました。吉原治良、白髪一雄、草間彌生といった日本を代表する巨匠たちの代表作が系統立てて収蔵されています。
第2の柱は、ウォーホルやリキテンスタインといったポップアートから現代に至る20世紀以降の世界の版画コレクション、そして第3の柱が、玉楮象谷や音丸耕堂、磯井如真ら人間国宝の作品をはじめとする香川の漆芸・伝統工芸です。前衛的な現代アートと、極限まで磨ぎ澄まされた伝統工芸の粋が同じ館内で対話し、呼応し合う展示構成は、高松市美術館ならではの唯一無二の鑑賞体験を生み出しています。