「平壌の高級ホテルに、盗聴器のない部屋など基本的に存在しない」――。かつて北朝鮮の治安機関に携わっていた脱北者や、現地を取材したジャーナリストは口を揃えてこう断言します。JBpressをはじめとする調査報道でも明らかにされている通り、北朝鮮は国家保衛省を中心とする24時間体制の国家盗聴システムを構築しており、外国人宿泊施設はその最重点ターゲットです。
実際にABEMAの報道特番に出演した裏社会系ジャーナリストの渡航証言によると、平壌の宿泊施設では「部屋の中の会話はすべて筒抜けである前提で行動するのが鉄則」と語られています。電話機の受話器内部、照明器具の基盤、壁のコンセントプレートの奥など、巧妙に偽装された盗聴マイクが仕掛けられており、肉眼で発見することはまず不可能です。2025年5月に報じられた平壌市内の固定電話盗聴装置の発覚劇でも浮き彫りになったように、一般市民向けの内線網ですら監視対象となっている国において、外国人が寝泊まりする空間が無防備であるはずがありません。
また、高麗ホテルの監視カメラ網も極めて高密度です。エントランスやフロントはもちろんのこと、各フロアのエレベーターホール、薄暗い廊下の隅々に至るまで死角を極力排除した配置がなされています。室内そのものにビデオカメラが常設されているかは部屋のグレードや時期によって意見が分かれますが、バスルームを除くリビングスペースへのピンホールカメラ設置を示唆する証言は後を絶ちません。滞在中は「見られている、聞かれている」という緊張感を一時たりとも解くことはできないのが冷酷な現実です。