膝の皿周辺の違和感は、痛みの有無や発生する音の質によって疑われる病態が大きく異なります。ご自身の自覚症状と照らし合わせ、どのようなリスクが隠れているかを把握してください。
「膝の皿がグラグラするが、痛みはまったくない」というケースでは、生まれつき関節や皮膚が柔らかい全身性関節弛緩症や、骨の溝が浅い大腿骨顆部形成不全(滑車部異形成)を背景とした膝蓋骨不安定症が疑われます。痛まないからといって安全なわけではありません。関節の適合性が狂った状態で擦れ合いが続けば、皿の裏側を覆う関節軟骨に偏った圧力がかかり続け、徐々に軟骨が摩耗していきます。
屈伸時に「ポキポキ」「パキッ」と乾いた音が鳴る、あるいは砂を噛んだように「ジャリジャリ」「ギリギリ」と軋む音がする場合、関節軟骨の変性やすり減り、もしくは「タナ(滑膜ヒダ)」と呼ばれる関節内の膜が皿と大腿骨の間に挟み込まれているサインです。特に軋轢音(あつれきおん)を伴う場合は、軟骨がすり減って骨同士が直接擦れ合う一歩手前の状態である膝蓋大腿関節症(PF関節症)が進行している恐れがあります。
「膝の皿が外れる感覚」「一瞬膝がカクンと抜ける感覚(ギビング・ウェイ)」を自覚しているなら、最も警戒すべきは膝蓋骨亜脱臼です。完全に外れ切る手前で何とか元の溝に戻っている状態ですが、関節を包む関節包や靭帯組織は微細な断裂を繰り返しています。これを放置すると、些細な方向転換やジャンプの着地で完全に外れてしまう「反復性膝蓋骨脱臼」へと発展し、激痛と関節内の大量出血(血関節症)を招く事態に陥ります。