新潟県新潟市に生まれた伊藤俊人さんは、日本大学藝術学部演劇学科へ進学。学生時代から演技の基礎を徹底的に叩き込み、1980年代の小劇場演劇ブームを牽引した劇団「第三舞台」に参加します。鴻上尚史氏の緻密な演出のもと、膨大なセリフ量と身体表現を要求される過酷な舞台で鍛え上げられた経験が、のちの変幻自在な演技力の強固な土台となりました。
転機となったのは、劇作家・三谷幸喜氏との邂逅です。三谷氏は伊藤さんの「神経質そうに見えてどこか憎めない、小市民的なペーソス」を瞬時に見抜き、自身の脚本作品へ積極的に起用し始めます。1993年のフジテレビ系連続ドラマ『振り返れば奴がいる』での医師役をはじめ、緻密なアンサンブルが求められる群像劇において、伊藤さんはなくてはならないスパイスとなっていきました。
どんなに短い出番であっても、その場の空気を一瞬で自分の色に染め上げる技術は、主役を引き立てながら自らも強烈な印象を残す「バイプレイヤーの理想形」として、制作陣から絶大な信頼を集めることとなったのです。