インターネット上のQ&AサイトやSNSでは、「言の葉」の由来に関して根拠の乏しい誤解が散見されます。その代表例が「言の葉とは『言葉の端くれ(ことのはし)』が転じたものだから、相手に対して使うと失礼にあたる」という説です。
国語学および古典文学の研究データに照らし合わせると、この解釈は明らかな誤りです。
「言の端(ことはし)」という語は確かに古語に存在し、「ちょっとした言葉」や「言葉の端々」を指す謙譲的・限定的な表現として用いられていました。しかし、前述の通り「言の葉」は『古今和歌集』において「心という種から生い茂る葉」という肯定的な比喩として創造された言葉であり、成立の文脈がまったく異なります。
ただし、現代の実用マナーとして注意すべき点もあります。ビジネスシーンにおける契約書や報告書、お詫び状などの極めて公的・実務的な文書で「温かい言の葉を賜り…」といった表現を使うと、装飾過多で芝居がかった印象を与えてしまうリスクがあります。誤用ではありませんが、TPOに応じた文体の使い分けが求められます。