かつて「大人のための絵本」というジャンルがまだ日本の出版業界に定着していなかった時代、河出書房新社がゴーリーの訳本シリーズを刊行したことは大きな事件だった。当時の絵本業界では、子供向けのほのぼのとしたストーリーが主流であり、モノクロの線の群れと毒のある世界観は異端中の異端とみなされていた。
しかし、刊行されるや否や、感度の高いクリエイターや読者の間で爆発的な話題を呼ぶ。古典的なゴシックホラーの美学を踏襲しながらも、どこかナンセンス文学の軽やかさを併せ持つゴーリーの作風。日本の出版文化において、絵本を「成熟した大人の文芸」として再定義した功績は計り知れない。