大聖堂の内部に足を踏み入れると、外観の重厚感から一転、高さ約43.35メートルの大身廊が作り出す圧倒的な垂直空間に息を呑みます。光を神の臨在の象徴と捉えた盛期ゴシック建築の特徴であるフライング・バットレス(飛梁)とリブ・ヴォールトが、巨大な石造構造を軽やかに支え、壁面を広大なガラス窓へと昇華させています。
内部鑑賞において、必ず訪れるべき核心の見どころは以下の3点です。
1. 三博士の聖遺物箱(Dreikönigenschrein)
内陣中央の主祭壇奥に鎮座する、中世金細工工芸の最高峰。12世紀後半から13世紀初頭にかけて、金細工の名匠ニコラ・ド・ヴェルダンが手掛けたヨーロッパ最大級の黄金の神殿型霊廟です。金銀の浮彫、1,000個以上の貴石・半貴石、古代のカメオが散りばめられたその輝きは、中世の巡礼者たちが命がけで目指した聖地の威厳を今に伝えています。
2. 時代を超越するステンドグラス群
総面積約10,000平方メートルに及ぶステンドグラスは、制作年代ごとの美意識の変遷を辿ることができます。
- バイエルン窓(Bayernfenster):南側側廊に並ぶ19世紀の傑作。バイエルン国王ルートヴィヒ1世が寄進したもので、絵画のように写実的かつ鮮やかな色彩で聖書の場面を描き出しています。
- ゲルハルト・リヒターのステンドグラス(Richter-Fenster):2007年に南側翼廊に設置された現代アートの金字塔。世界的画家リヒターが手掛けた約113平方メートルの窓は、中世の配色に基づく72色の正方形ガラス(計11,263枚)がコンピュータプログラムによってランダムに配置されており、差し込む陽光によって聖堂内に幻想的な光のモザイクを創り出します。
- 長老の窓(Bibelfenster)と中世オリジナル窓:内陣奥に残る14世紀初頭の窓ガラス。第二次世界大戦中に取り外され安全に疎開保管されていたため、奇跡的に現存しています。
3. ゲロの十字架とミラノの聖母
北側礼拝堂にある「ゲロの大十字架(Gero-Kreuz)」は、970年頃に制作されたアルプス以北で最古の大型木造磔刑像です。苦痛に満ちたキリストの表情は初期ロマネスク彫刻の傑作として名高く、南側礼拝堂の優雅なゴシック彫刻「ミラノの聖母像(1290年頃)」と並び、信仰の深さを象徴しています。