熱海がかつて社員旅行のメッカとして栄華を極め、その後に急激な衰退を経験したのは周知の事実だ。だが、近年のV字回復を経て2026年に至る熱海ブームは、以前のブームとは明らかに性質が異なる。高級外資系ホテルやスタイリッシュなデザイナーズ旅館が相次いで進出する一方、旅慣れた人々が最終的に戻ってくるのが、この昭和の息吹をそのまま残したメガリゾートなのだ。
洗練されすぎたミニマリズムへのカウンターカルチャーとも呼べる現象が起きている。映画のセットのような重厚なラウンジや、無駄に広い廊下、ガラス張りの大空間。これらは今ゼロから建てようとしても莫大な建築費がかかり、現代では再現不可能な歴史的遺産に近い。InstagramやTikTokで拡散される「リアル昭和」を求める若者たちにとって、作られたレトロカフェでは味わえない本物の歴史の重みが、この場所には溢れている。