エンジェル・ダストの派手なヴィジュアルと自虐的なユーモアの背景には、生前における抗えない血筋の呪縛が存在します。制作陣の公式アーカイブおよびクリエイターの言及によると、彼の生前の本名は「アンソニー(Anthony)」。1940年代のアメリカ・ニューヨークにおいて、組織犯罪に手を染めていたイタリア系マフィアの家庭に生まれ落ちました。
裏社会の冷酷な暴力と犯罪が日常であった環境下で、彼は早くから心身を摩耗させていきました。父親や兄弟たちによる威圧的な支配、そして同性愛者としてのアイデンティティを抑圧せざるを得ない時代背景が、彼を逃避的な薬物依存へと追い込んでいった経緯が示唆されています。そして1947年、合成麻薬フェンタニルやPCP(通称「エンジェルダスト」)の薬物過剰摂取(オーバードーズ)が直接の死因となり、20代という若さで非業の死を遂げました。地獄で名乗っている「エンジェル・ダスト」という名は、奇しくも自らの命を奪った薬物の俗称そのものに由来しています。
地獄において彼が多腕のクモ(蜘蛛)の悪魔の姿をとっている点についても、極めて象徴的な意味が込められています。犯罪組織という逃れられない「蜘蛛の巣(Web of Crime)」に絡め取られていた生前の境遇が、死後の外見として具現化されたものです。自らの死因となった薬物の名を背負い、かつて自分を縛り付けた網の主であるクモの姿で地獄を生きる選択には、過酷な宿命に対する彼なりの防衛機制と皮肉が色濃く反映されています。