『秒速5センチメートル』が長年にわたりカルト的な支持を集め続ける最大の要因は、鑑賞者の実人生と強く結びつく「体験型のアニメーション」であった点にあります。SNSやレビューサイトにおける長年の声を分析すると、「観るたびに年齢によって刺さるポイントが変わる」「青春の未練をえぐり出されるが、最後にはなぜか救われる」といった深い共感の声が圧倒的多数を占めています。
その熱量を裏付けるのが、全国各地に広がる聖地巡礼カルチャーの定着です。第1話で豪雪による運行遅延が描かれた両毛線・岩舟駅(栃木県)、第2話の舞台となった種子島(鹿児島県中種子町)、そして物語の象徴である小田急線沿線・参宮橋駅周辺の踏切(東京都渋谷区)には、公開から20年近くが経過した現在でも国内外から多くのファンが訪れています。
特に種子島では、ロケット打ち上げの壮大な光景と、主人公たちが過ごしたローカルなコンビニエンスストアや海岸のコントラストが、アニメツーリズムの代表的な成功例として語り継がれています。実写化の発表以降は、かつてのファン層に加え、松村北斗や奥山監督のファンによる再訪の波が押し寄せており、ロケーションの持つ普遍的な魅力が次世代へと継承されています。