音花ゆりの舞台歴における最大の金字塔は、何と言っても宝塚歌劇団星組の娘役スターとしての圧倒的な足跡です。2001年に難関を突破して入団した宝塚音楽学校87期生であり、彼女は入学試験・卒業時ともに首席という伝説的な成績を収めました。同期には元月組トップスターの龍真咲、元雪組トップスターの早霧せいな、専科や外部舞台で活躍する沙央くらま、和音美桜など錚々たる実力派が顔を揃えており、その黄金世代の頂点に立っていたのが音花ゆりでした。
星組配属後は、その圧倒的な声量とどこまでも澄み渡る美声によって劇団屈指の「歌姫」として重用されました。宝塚のグランドフィナーレにおいて、パレードの幕開けを告げる最重要ポジションである「エトワール」を何度も任され、『ロミオとジュリエット』『オーシャンズ11』『眠らない男・ナポレオン』など、星組を代表する名作において劇場の隅々まで美声を響かせ、観客の魂を揺さぶり続けました。
そして2015年5月10日、『黒豹の如く/Dear DIAMOND!!』の東京宝塚劇場千秋楽をもって、星組の黄金期を牽引したトップコンビ(柚希礼音・夢咲ねね)と同時に惜しまれつつ退団しました。当時、劇団内での絶対的な存在感から「なぜ今退団するのか」とファンに大きな衝撃を与えましたが、その退団理由の根底には「星組の黄金時代を支えきり、娘役・歌姫としての役目を完全にやり遂げた」という清々しい達成感がありました。柚希礼音率いる星組の集大成を見届け、自身も最高のコンディションのまま次なる表現の旅へ踏み出すという、美学に貫かれた決断だったのです。