ネットの検索サジェストやSNS上で時折見かける「幸せのパンケーキ船橋店 閉店」というキーワード。結論から申し上げますと、運営会社である株式会社マジア・ディ・ファリーナの公式発表資料および過去の全出店アーカイブを遡っても、船橋市内に「幸せのパンケーキ」がオープンした事実は一度もありません。すなわち、閉店したのではなく、そもそも実在しない「幻の店舗」です。
存在しないはずの店舗が、なぜ「閉店した」とまで噂されるに至ったのか。情報生態系の観点から検証すると、主に3つの構造的な要因が浮かび上がります。
第1に、千葉県屈指の巨大商業集積地に対する消費者の先入観です。船橋駅周辺には東武百貨店やシャポー船橋が直結し、ベイエリアには国内屈指の規模を誇るららぽーとTOKYO-BAYが控えています。「全国区の有名スイーツ店なら、船橋やベイエリアに絶対あるはずだ」という無意識の認知バイアスが働き、多くのユーザーが所在を確かめようと検索を繰り返した結果、アルゴリズムが関連キーワードを固定化させました。
第2に、千葉県内店舗の動向と他店との混同です。千葉県内では過去に「幸せのパンケーキ 千葉店」(千葉市中央区富士見)が展開され話題を集めましたが、その後の情勢変化に伴い営業形態が見直された経緯があります。この県内店舗の撤退や移転のニュースと、船橋エリアの商業施設内にあるハワイアン系やスフレ系の競合パンケーキ店の入れ替え情報がネット上で誤って混ざり合い、「船橋店が潰れてしまったのではないか」という誤認を生み出しました。
第3に、検索エンジンのサジェスト機能がもたらす増幅ループです。実在しない店舗名であっても、「船橋店に行きたい」と探す人が増え、店舗が見つからないことから「船橋店 閉店した?」と再検索されることで、検索エンジンが「閉店」を有力な関連語として提示してしまいます。これらが積み重なり、「かつて存在して閉店した」という虚構の共通認識が形成されたのです。