日常会話では混同されやすい言葉ですが、電気工学や日本の産業界における位置づけは完全に整理されています。根本的な関係性を整理すると、「電線」という巨大なカテゴリーの中に「裸線」「絶縁電線」「コード」「ケーブル」という個別分類が存在するという包含関係にあります。つまり、すべてのケーブルは電線の一種ですが、すべての電線がケーブルと呼べるわけではありません。
両者の命運を分ける決定打が、JIS規格の定義に基づく「保護層(被覆)の構造」です。電線とケーブルの違いを解剖すると、内部のコア構造にその秘密があります。
電気を流す金属部分を「導体」、その周囲を取り囲んで漏電を防ぐ一層目のプラスチックを「絶縁体」と呼びます。この導体と絶縁体だけで構成された製品は「絶縁電線」に留まり、ケーブルを名乗ることはできません。ケーブルと認定されるためには、絶縁体で包まれた芯線をさらに保護するシース外装の有無が不可欠です。最外層に耐摩耗性や耐水性に優れたビニルやポリエチレンの「シース(外装)」を施し、二重三重の防護壁を構築した製品のみが、晴れてケーブルとしての規格承認を得られます。
見分け方は極めてシンプルです。断面を確認した際、銅線の外側に樹脂層が1層しかなければ絶縁電線、樹脂層が2層以上(芯線ごとの絶縁被覆+束ねる外装シース)存在していればケーブルと判別できます。この外装シースこそが、衝撃や擦れ、経年劣化から電路を死守する防壁として機能しています。