現在、治療の第一選択となっているのは第2世代に分類される非定型抗精神病薬です。1950年代に登場した第1世代(定型抗精神病薬:ハロペリドールなど)は、陽性症状に対する確実な鎮静力を誇る反面、手指の震えや筋固縮といった錐体外路症状を高頻度で引き起こしました。これに対し非定型抗精神病薬は、セロトニン受容体やアドレナリン受容体にもバランスよく作用し、副作用を抑えつつ陰性症状や認知機能の改善を目指せる特徴を備えています。
なかでも臨床現場で使い分けが議論される代表例が、DSS(ドパミン・セロトニン・システムスタビライザー)と呼ばれるエビリファイ(一般名:アリピプラゾール)と、その進化系であるSDAM(セロトニン・ドパミン活性調節薬)のレキサルティ(一般名:ブレクスピプラゾール)です。
両者の決定的な違いは、ドパミンD2受容体に対する「パーシャルアゴニスト(部分作動薬)活性の強さ」にあります。エビリファイは受容体作動率が約60%と高く、ドパミンが枯渇している領域では刺激を与え、過剰な領域では遮断するため、眠気や体重増加を起こしにくいメリットがあります。しかしその反面、投与初期に強いアカシジアや不眠、落ち着きのなさを誘発しやすい側面がありました。一方、レキサルティは作動率を約40%前後に抑え、セロトニン5-HT1A受容体や5-HT2A受容体への結合親和性を最適化しています。これにより、エビリファイの長所であった代謝系への好影響を維持しながら、アカシジアの発現頻度を有意に低下させることに成功しました。