偽史としての実態が広く認知された現在、江戸しぐさをめぐる状況は一変しています。文部科学省の指導要領改訂や教科書検定の過程で見直しが進み、公立学校の道徳教科書や公的副教材からは事実上すべて姿を消しました。
提唱団体であったNPO法人も解散し、自治体や企業が主催するセミナーで「江戸の伝統」として大々的に掲げられるケースは激減しています。現在における江戸しぐさの評価は、「伝統を偽装した現代のマナー運動」であり、「心地よい物語であれば誰もが騙されてしまう情報リテラシーの失敗例」として位置づけられています。
思いやりの心や譲り合いの精神そのものは否定されるべきものではありません。しかし、現代の規範を肯定するために過去の歴史を捏造し、それを権威づけのために利用した手法は、歴史への不誠実さとして重い教訓を残しました。