日本におけるクリスマスツリー生木の普及を決定づけた象徴的なムーブメントが、毎年11月下旬に展開されるIKEAモミの木販売です。毎年発売日当日の早朝から行列ができ、数千円という手頃な価格帯と「使い終わった生木を年始に店舗へ返却するとクーポン券として還元され、木は堆肥としてリサイクルされる」というサステナブルな循環システムが、若いファミリー層の心を掴みました。
しかし、ネット上のコミュニティやSNSを精査すると、生木ならではのリアルな苦悩も浮き彫りになっています。
「憧れの生木を買った初年度、暖房の効いたリビングに置いたらわずか1週間で葉が枯れ落ち、床が緑色のトゲだらけになって掃除機が壊れそうになった」(30代主婦・東京都在住)
「新聞紙で包んで持ち帰る際、樹液が車のシートについて取れなくなった。部屋に置いた翌朝、小さなクモや虫が出てきて家族が大騒ぎに」(40代男性・神奈川県在住)
こうしたトラブルの背景には、生木が「工業製品ではなく、呼吸を続ける農産物である」という認識の不足があります。IKEAなどで販売される生木は基本的に根を切り落とした「切り枝(カットツリー)」であり、切り花と同じように絶えず水を吸い上げさせなければ急速に水分を失いミイラ化します。購入直後に幹の根元を数センチ切り戻して導管を開通させる作業や、車載時の養生シートの準備、そして搬入前の丁寧なシャワー洗浄(外干しでの乾燥)を怠ったことが、トラブルの主要因となっているのです。