「最高で金、最低でも金」。2000年のシドニーオリンピック開幕前、彼女が残したこの言葉は、今なお日本のスポーツ史上屈指の名言として語り継がれている。バルセロナ、アトランタと2大会連続で銀メダルに終わり、日本中が息をのむ中で迎えたシドニーの畳。押しつぶされそうな重圧を完璧な勝ち筋へと昇華させ、悲願の金メダルを首にかけた瞬間、世界は彼女を中心に回っていた。
彼女の勝負強さはどこから生まれたのか。卓越した体幹の強さと、相手の重心を一瞬で見抜く直感力。しかしそれ以上に、圧倒的な練習量に裏打ちされた不動の精神力こそが最大の武器だった。柔道という武道の気品を守りつつ、世界中のライバルたちを畳に沈めていく姿は、競技の枠組みを超えて社会全体に勇気を与えたのである。