食べ進めるうちに、器の底には旨味が凝縮された薄いスープ状の出汁が残る。この最後の一滴まで飲み干したいとき、器を大きく手前に傾けてスプーンでかき集めるのはマナー違反なのだろうか。
結論から言えば、器を手に持ち上げて口元に運ぶことは、日本の食文化において全く問題ないどころか、むしろ推奨される行為だ。和食では「器を持って食べる」ことが基本であり、重い丼ものでない限り、茶碗蒸しの器を手で包み込むように持ち上げるのはごく自然な所作とされる。左手で器をしっかり持ち、少し傾けてスプーンで掬うか、あるいは直接口をつけずにスプーンで最後の一滴まで楽しむ。テーブルに置いたまま猫背になって器を覗き込む姿こそが、最も避けるべき格好悪さと言える。