汚れを「単なる見た目の問題」として軽視し続けると、取り返しのつかない健康被害と経済的損失に直面することになります。東京都内の歯科クリニックで日々診療にあたる現場の歯科衛生士は、近年の臨床現場について次のように警鐘を鳴らします。
「マスクを外す機会が完全に戻って以降、『人から口臭を指摘された』『急に歯がグラグラしてきた』と駆け込んでくる患者さんが増えています。しかし、検査をするとすでに中等度から重度の歯周病に進行しており、歯槽骨(歯を支える骨)が半分以上溶けてしまっているケースも珍しくありません」
口内に停滞したプラーク(歯垢)は、約48時間で唾液中のカルシウムを取り込み、石のように硬い「歯石」へと変化します。歯石の表面はザラザラしているため、さらにプラークが付着しやすくなる悪循環に陥ります。ここで発生する嫌気性細菌が揮発性硫黄化合物(VSC:硫化水素やメチルメルカプタン)を放出し、これが腐敗臭のような強烈な口臭の原因となります。口臭と歯周病の関係は切っても切り離せない関係にあります。
さらに、虫歯放置の危険性と末路は想像を絶します。初期段階の脱灰であれば再石灰化が望めますが、象牙質から神経(歯髄)まで達した虫歯を放置すると、激痛の後に神経が壊死します。痛みが消えたからと放置を続けると、根の先(根尖部)に膿が溜まり、顎骨炎や副鼻腔炎、さらには血流に乗って細菌が全身へ回り心内膜炎や脳梗塞を引き起こすリスクすら生じます。最終的に抜歯を余儀なくされた場合、インプラント治療には1本当たり30万〜50万円の自費費用が必要となり、生涯を通じた損失は数百万円単位に膨らみかねません。