ネット上の掲示板やSNSで頻繁に交わされる「髪が多すぎて手に負えないから、限界まで根元からすいてもらった」という投稿。実はこれこそが、スタイリストが口を揃えて警鐘を鳴らす最大の悲劇の始まりである。
ハサミを深くまで入れすぎると、切り落とされた根元付近の短い毛が「ツンツンとした突起」のような役割を果たし、上から被さる長い毛を内側からジャッキのように押し上げてしまう。結果として、毛先はスカスカで乾燥しているのに、頭頂部から中間にかけては余計に四角く膨らむという最悪のシルエットが完成する。大手サロンの技術指導責任者は次のように語る。
「多毛のお客様が求める『軽さ』とは、物理的な重さの減少ではなく、見た目のしなやかさと手触りの扱いやすさです。すきバサミでやみくもに毛束を削ると、光を均一に反射する『面』が失われ、清潔感に直結するツヤが根こそぎ消え去ってしまいます。2026年のプロフェッショナルは、梳くのではなく『空間を抜く』スライドカットやインナーグラデーションを駆使します」
また、ボリュームダウンを狙って無計画に縮毛矯正を繰り返す施術にも注意が必要だ。強い薬剤で毛先まで針金のように真っ直ぐにしてしまうと、根元の毛量と毛先の細さに不自然な段差が生じ、かえって「頭でっかち」な不調和を招く。全体の広がりを抑えたい場合は、うねりの強いハチ下や内側だけにポイントで酸性ストレートを施し、表面は自然な丸みを残すのが現在のスマートな解決策だ。