ネット上の掲示板やSNSの知恵袋などを観察すると、「見つけたらすぐ毛抜きで抜くのが手っ取り早い」という危険なアドバイスが散見されます。しかし、臨床の現場に立つ皮膚科医は口を揃えて下の毛の白髪を抜くリスクの大きさを警告します。
アンダーヘアは頭髪よりも毛根が深く、皮脂腺の発達したデリケートな皮膚に生えています。これをピンセットなどで無理やり引っ張って引き抜くと、毛乳頭周囲の毛細血管が破壊されて内出血を起こすだけでなく、毛穴の内壁が裂けて細菌が侵入します。その結果として生じるのが、赤く膿んで激痛を伴う「毛嚢炎(もうのうえん)」です。
さらに深刻な二次被害が「埋没毛(イングロウンヘア)」です。毛を強引に抜いたことで毛穴の開口部がかさぶたや角質で塞がれ、次に生えてきた毛が皮膚の外に出られず皮下で渦を巻いて成長してしまう現象です。皮膚の中で毛が異物反応を起こすと慢性的な硬結(しこり)や黒ずみ、色素沈着を引き起こし、患部を露出できないほどの傷跡を残すことすらあります。
では、生えてしまった毛をケアした場合、下の毛の白髪は黒髪に戻るかという疑問が生じます。結論から言えば、老化によってメラノサイト幹細胞そのものが完全に死滅している場合は不可逆的であり、再び黒く染まることはありません。一方で、急激な精神的負荷や一時的な血行不良、極度の栄養不足が原因でメラノサイトが休止期に入っていただけであれば、生活環境の是正によって次の毛周期で黒色に戻る可能性は医学的にも残されています。