田川後藤寺駅のプラットホームに立つと、広大な側線跡や長いホームの長さに驚かされます。この空間こそが、かつて筑豊炭田の心臓部として栄華を極めた歴史の証左です。明治時代の開通以来、この駅は石炭を満載した貨物列車(セキ)が全国へ向けて送り出される一大拠点でした。
かつて駅構内には巨大な「後藤寺機関区」が設置され、煙を吐く蒸気機関車が昼夜を分かたずひしめき合っていました。エネルギー革命に伴い炭鉱が閉山した後は規模を縮小したものの、鉄道の街としての誇りは今も地域に息づいています。
その歴史を象徴するのが、駅前で販売されている銘菓「黒ダイヤ」です。石炭の別名である「黒いダイヤ」にちなんで命名されたこの羊羹は、炭鉱マンたちが過酷な労働の合間に求めた甘みとエネルギー源の歴史を今に伝えています。駅前にはどこか懐かしい佇まいの食事処や喫茶店が並び、昭和の高度経済成長期へタイムスリップしたかのような独特の情緒を漂わせています。