大鵬が打ち立てた32回という記録は、長らく「絶対に破られない絶対防衛線」と信じられていた。連勝記録や幕内全勝優勝など、大鵬が遺した数字は昭和のスポーツ界における金字塔だった。しかし、それを打ち破る存在が現れる。昭和末期に驚異的な強さを見せた千代の富士だ。筋肉質な体躯から繰り出される高速の前まわし回し込みと強烈な上手投げは、土俵上の脅威そのものだった。
やがて時代は平成へと移り、若貴ブームが日本中を揺るがす。貴乃花が残した22回の優勝は、度重なる負傷との闘いでもあった。膝の重傷を押して出場し、鬼の形相で賜杯を抱いた一番は、大相撲史に語り継がれる屈指の名場面だ。
そして21世紀、白鵬翔の登場によって相撲界の数字は異次元の領域へと踏み込む。圧倒的な柔軟性、鋭い立ち合い、そして相手の戦術を完封する相撲勘。白鵬は年6場所制の定着した現代において、15年間以上にわたってトップに君臨し続けた。