「いちごの旬はいつですか?」と街頭で問えば、大半の人が「クリスマス前後から真冬」と答えるはずです。しかし、自然の太陽光と露天の土壌で育てるいちご本来の旬(露地栽培)は5月中旬から6月上旬にかけての初夏です。いちごはバラ科の多年草であり、冬の厳しい寒さを経験した後に、春の温暖な気候と日照時間の増加を感じ取って花を咲かせ、初夏に結実するという植物生理を持っています。
昭和40年代以前の日本では、いちごといえば「春の終わりを告げる風物詩」でした。当時を知る高齢世代の手記や農協の古い記録にも、「5月の連休前後に畑で赤くなった小粒のいちごを摘み、牛乳と砂糖をかけてスプーンで潰して食べた」という記述が散見されます。
この自然の摂理を根底から変えたのが、昭和40年代から50年代にかけて急速に普及したハウス栽培(促成栽培)です。ビニールハウス内で暖房機を稼働させて温度をコントロールし、夜間に電照を行って日長を疑似的に再現することで、収穫時期を秋から冬へと強引にシフトさせる技術が確立されました。その結果、本来初夏に実をつけるはずのいちごが、真冬の11月下旬から店頭に並ぶという「時期のズレ」が定着したのです。