ネット上の医療掲示板や健康情報サイトでは、「胆道系のがんは大酒飲みや脂っこいものばかり食べる人がかかる病気」といった短絡的な言説が散見されます。しかし、これは危険な誤解です。
第一の誤解は、「禁酒・禁煙をしているから自分は無縁だ」という思い込みです。確かに過度の飲酒や喫煙は発がんリスク因子ですが、前述の膵胆管合流異常や先天性胆道拡張症は生まれつきの構造異常であり、生活態度とは無関係に発症します。また、アルコール歴が一切ない非喫煙者の女性が、原発性硬化性胆管炎や肝内結石を背景に発症する例は珍しくありません。
第二の誤解は、「通常の健康診断で異常なしなら大丈夫」という油断です。一般的な住民健診や簡易人間ドックで行われる胸部X線検査や胃バリウム検査、一般的な肝機能検査(GOT/GPT)だけでは、初期の胆道異常を検知することは極めて困難です。胆道系の閉塞を鋭敏に反映する「ALP」や「γ-GTP」が軽度上昇していても、「疲れのせい」「脂肪肝の影響」として再検査を先送りにしてしまう例が後を絶ちません。
さらに近年、病理学および分子疫学の進展によって注目されているのが、非アルコール性脂肪性肝炎(MASH)やB型・C型肝炎ウイルスと肝内胆管がんの密接な関連です。肝細胞がんの原因として知られる肝炎ウイルスや重度の代謝異常性脂肪肝は、肝内の胆管細胞にも慢性的な酸化ストレスを与え、肝内胆管がんの発生母体となることが実証されています。「お酒を飲まない肥満体質」であっても、内臓脂肪蓄積とインスリン抵抗性が胆道がんの温床になり得るのです。