『鬼滅の刃』の物語序盤、絶望の淵に立たされた炭治郎と禰豆子を迎え入れ、鬼殺の剣士へと育て上げたのが狭霧山に住む鱗滝左近次です。常に天狗の面で素顔を隠し、厳しい試練を課す彼の正体は、かつて鬼殺隊の最高位である「柱」を務めた元水柱であり、次世代を育成する「育手(そだて)」という重要な役目を担っていました。
この重厚で情に厚いキャラクターに命を吹き込んだのが、大ベテラン声優の大塚芳忠さんです。鬼に家族を奪われた炭治郎に対し、生き残るための厳しさを徹底的に叩き込みつつも、最終選別から無事帰還した際には面の下で涙を流して抱きしめる――。そんな「厳格な師匠」と「慈愛に満ちた父親」の二面性を、大塚さんは唯一無二の表現力で見事に演じ切りました。
原作者の吾峠呼世晴先生が描く情念の世界観に、大塚さんの渋く包容力に満ちた声が合致したことで、鱗滝は単なる脇役にとどまらず、物語全体の精神的支柱としてファンの心に深く刻まれることになりました。