鬱蒼とした薔薇園に佇む洋館、永遠の時を彷徨うかのような浮世離れした雰囲気――この情景に、少女漫画界の金字塔を想起しない者はいないだろう。漫画家・萩尾望都が小学館の少女コミック誌上で発表し、時代を超えて読み継がれる名作『ポーの一族』の世界観と、この屋敷が放つ空気感には驚くほどの共通点が存在する。
ヨーロッパの古い伝承と日本の耽美趣味が奇跡的な融合を果たした空間は、当時のクリエイターたちにとっても格好のインスピレーション源であったに違いない。小学館をはじめとする当時の編集者たちの間でも、人里離れた洋館にまつわる噂話が創作のモチーフとして熱心に交わされていた形跡が残る。現実の建造物が持つ圧倒的な美と哀愁が、不朽の芸術へと昇華されていった過程がうかがえる。