分離手術の成功は奇跡的な第一歩に過ぎなかった。術後、弟のドクさんが懸命なリハビリを経て義足を使い学校に通うなど社会復帰を果たしていった一方で、兄のベトさんは重い脳障害を患い、寝たきりの闘病生活を余儀なくされた。意識が戻らぬ兄を、ドクさんはツーズー病院のベッドサイドで献身的に看病し続けた。
しかし、過酷な運命は残酷にもふたりを永遠に分かつ。2007年10月、兄のグエン・ベトさんは腎不全や肺炎の悪化により26歳で息を引き取った。半身を失ったかのような底知れぬ喪失感の中で、ドクさんは「兄の分まで前を向いて生きる」と心に誓った。自らの身体に刻まれた傷痕と兄の遺志を抱きしめながら、彼はひとりの自立した人間として歩む決意を固めた。