捜査は当初、難航を極めるかに見えた。侵入の形跡が極めて巧妙であり、金銭目的の強盗なのか、人間関係をめぐる怨恨なのか、あるいは突発的な単独犯行なのか、見極めが難しかったためである。しかし、周囲の防犯カメラ映像の精査と現場に残された微物のDNA鑑定が、一人の身近な人物を浮き彫りにした。
手錠をかけられたのは、被害者と同じアパートの別の部屋に居住していた男だった。深い付き合いや会話はほとんどなかったものの、すれ違いざまの挨拶や日常のわずかな接点の中で、男は勝手な執着と歪んだ欲望を募らせていたという。壁一枚を隔てたすぐ隣に凶行を企てる人物が潜んでいたという恐怖に、近隣住民は言葉を失った。