山田孝之は化ける。それも、恐ろしいほどの精度で。
ある時はボサボサの無精ヒゲで社会の底辺を生きる男を泥臭く演じ、またある時は冷徹なエリートを剃り整えられた清潔感のある表情で表現する。彼のヒゲは、単なるファッションや趣味の領域を超えている。それは、演じるキャラクターの精神性を物理的に表現するための、最も直感的かつ強力なツールなのだ。
役作りのために体重を増減させる役者は多いが、彼は毛量のコントロールにおいても徹底している。自らの顔をキャンバスに見立て、役柄に必要な陰影をヒゲの濃淡や形で描き出す。今回の変貌も、彼が新しいキャラクターの「魂」を宿すための儀式のようなものかもしれない。